エロティシズムだけではない、
多彩な表現内容、技巧、
その創造性!
表情豊かに描かれる
「性」と「生」を発見する
驚きのドキュメンタリー映画。

葛飾北斎、喜多川歌麿をはじめとする江戸の名だたる浮世絵師たちが、並々ならぬ情熱を注いだ春画。彫り・摺りの高度な技術も投入され、「美」「技」において超一級の芸術と呼べる作品が数多く生み出されたが、時代が江戸から明治に変わると“わいせつ物”として警察による取り締まりの対象となり、日本文化から姿を消してしまった。性別を問わず楽しめるアートとして再評価の機運が高まったのは、つい最近のこと。2013年、ロンドン・大英博物館での世界初の大規模な春画展に大勢の人が詰めかけ、その半数以上が女性で、2015年~16年の、東京と京都での日本初の「春画展」も動員29万人を記録し、その約半数が女性だった。

いまだ知られざる部分も多い春画の深遠なる魅力にあらゆる角度から迫り、その奥深くへと観客をいざなう本作。美しい映像で映し出されるのは、北斎の有名な“蛸と海女”の絵、歌麿の「歌満くら」、鳥居清長の「袖の巻」、鈴木春信のユーモラスな「風流艶色真似ゑもん」、大名家への嫁入り道具と伝えられる華麗な肉筆巻物、ヨーロッパのコレクター秘蔵の「春画幽霊図」などなどバラエティーに富んだ傑作の数々。さらには贅を尽くした源氏物語のパロディー「正写相生源氏」(歌川国貞)の絢爛豪華な“極初摺り”も登場! 金・銀などを惜しみなく使い、超絶技巧を駆使した立体的な表現は、現代では再現不可能とまで言われている。
春画に描かれている性愛のかたちは驚くほど多彩で、必ずしも性愛だけを描くわけでもない。そこには歓喜と興奮、情熱と悲哀、嫉妬、駆け引きなど人間味あふれるドラマや、春画が「笑い絵」と称されるようにユーモアをもって描かれる「生命」そのものの魅力に引き込まれずにはいられない。また、復刻やデジタル化などのプロジェクトを紹介。没入感を味わえる春画のアニメ化も必見だ。
2023年10月13日公開の劇映画『春画先生』(主演:内野聖陽、監督:塩田明彦)と共に、映画ならではの魅惑の春画ワールドへ、ようこそ!

「袖の巻」(鳥居清長・画)、「好色図会十二候」(勝川春潮・画)、「歌満くら」(喜多川歌麿・画)、「春画幽霊図」(勝川春英・画)、
「風流艶色真似ゑもん」(鈴木春信・画)、「四季画巻」(月岡雪鼎・画)
提供:浦上蒼穹堂/国際日本文化研究センター/Michael Forniz

監督:平田潤子

大学時代 京都で自主映画制作を行い、2000年映像制作会社テレコムスタッフに入社。03年、助監督としてドキュメンタリー映画『裸の夏』(07)に参加する。ディレクターとして数々のドキュメンタリーを演出。主な作品に『三代の恋物語』(06/ATP新人賞)、『ペンダン・トイヴ』(09)、『にっぽんの記憶』(10/ゆふいん文化記録映画祭松川賞)、『なにゃどやら-陸中小子内の盆唄-』(12/ 山形ドキュメンタリー映画祭)、『詩人榎本櫻湖の冬の旅』(16/映文連アワード)など。アートドキュメンタリーシリーズ「Edge」制作にも長く携わっている。

企画・プロデュース:小室直子

京都国際学生映画祭事務局運営に携わり、日活を経て2018年よりカルチュア・エンタテインメント(株)カルチュア・パブリッシャーズ所属。
主なプロデュース作品に『風に濡れた女』(16/塩田明彦)、『海を駆ける』(18/深田晃司)、『フジコ・ヘミングの時間』(18/小松莊一良)、『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(21/堀江貴大)、『あちらにいる鬼』(22/廣木隆一)、『658km、陽子の旅』(23/熊切和嘉)、『春画先生』(23/塩田明彦)などがある。

プロデューサー:橋本佳子

テレビ、映画とも数多くの受賞作をプロデュースし、2005年までの20年間、ドキュメンタリージャパンの代表を務める。
主なプロデュース作品に『ニッポンの嘘 報道写真家 福島菊次郎 90歳』(12/長谷川三郎/キネマ旬報文化映画第1位)、『フタバから遠く離れて 第1部・第2部』(12・14/舩橋淳/ベルリン国際映画祭正式招待作品)、『FAKE』(16/森達也)、『いしぶみ』(16/是枝裕和)、『Ryuichi Sakamoto: CODA』(17/スティーブン・ノムラ・シブル/ヴェネチア国際映画祭正式招待作品/文化庁映画賞)、『沖縄スパイ戦史』(18/三上智恵/文化庁映画賞)など。
個人として放送文化基金個人賞、ATP個人特別賞、日本女性放送者懇談会放送ウーマン賞を受賞。