結婚式を間近に控えたサラリーマンの間宮(落合モトキ)は、ある日突然、婚約者の由香理(大西礼芳)から浮気しているとカミングアウトされて破局してしまう。なかば自暴自棄になった間宮は、職場の後輩の松山雄司(内村遥)から教わったマッチングアプリに登録。唯一返信をくれた若い女性(あの)と喫茶店で待ち合わせる。
車で自宅のマンションに向かいながら、間宮は相手がまだ女子高生であることに気づく。一瞬躊躇するも、どこか挑発的な少女の誘いについ乗ってしまう。しかし先にシャワーを浴びている間に、少女は大量の薬を飲んで自殺してしまっていた。死体の傍らには、「さようなら 冷めないうちにどうぞw」と書かれたメモが置かれていた。
慌てて救急に連絡するも、うまく説明できずに電話を切ってしまう間宮。うろたえながらも証拠隠滅をはかり、死体を山中に運んで埋めようとするが、穴を掘っているうちに、車のトランクに入れていたはずの死体は消えてしまっていた。
途方に暮れつつ自宅に戻ると、部屋には少女のカバンが残されていた。開けてみると、予備校の教材やナイフが入っていたが、少女の身元がわかるようなものは何も見つからない。
間宮は罪の意識と死んだ少女の幻影に怯えるようになり、仕事にも身が入らなくなってしまう。ある夜、近所の公園でひとり缶コーヒーを飲んでいたら、ネットアイドルの凛(横田真悠)と彼女のファンたちに話しかけられる。彼女たちは「王様の耳はロバの耳(通称ミミ)」というARアプリにハマっているという。誰かが「ミミ」を使って映像を投稿すると、ユーザーはその映像を撮影された場所でだけ再生できる。凛たちは「ミミ」に投稿するための映像を撮っていたのだ。
凛から「ミミ」ユーザーたちのカリスマ、“明日香”の存在を知った間宮は、その姿を見て驚く。自宅のマンションで自殺した少女と瓜二つだったのだ。“明日香”は、街のあちこちで自分の映像を投稿しており、“謎の美少女”として熱狂的なファンを得ていた。ファンたちは街を徘徊しながら、“明日香”の痕跡を見つけることに夢中になっていた。
間宮は、消えた“明日香”の行方を知ろうと、新しく投稿された映像を探し始める。そんな間宮を、“明日香”のファンたちは“新規さん”と呼んで歓迎する。しかし“明日香”の投稿は間宮と会った日を最後に途絶えてしまっていた。間宮は“明日香”が投稿した映像を探しながら、ときに寂しく、ときに優しく、場所ごとにガラリと印象を変える“明日香”に魅了されていく。
“明日香”の痕跡を追いかけるうちに、現実と幻想の境界が曖昧になっていく間宮。いったい“明日香”とは何者か? 彼女は死んだ少女と同一人物なのか? そして本当に存在するのだろうか?