PLANNING TIPS 受賞者×審査員対談

  • 藤田健司さん(TCP2020脚本部門グランプリ)× 瀬戸麻理子さん(二次・最終審査員)
    スペシャルインタビュー

応募者代表:藤田健司

(TCP2020脚本部門グランプリ受賞)

審査員代表:瀬戸麻理子

(TCP2020二次・最終審査員)

TCP2020年度最終審査(プレゼン)の様子

TCP2020年度の流れ

募集期間:2020年3月17日(火)~5月19日(火)
募集方法:1次審査(社員審査)5月~6月→2次審査(面談)9月→最終審査(プレゼン)11月19日(木)

TCP2022開催を記念して、TCP2020年度脚本部門グランプリ受賞者の藤田健司さん×TCP2020年度二次・最終審査員の瀬戸麻理子さんにスペシャルインタビューを実施。
現在、藤田さん受賞作品『バトリーヌ!(仮)』を二人三脚で鋭意製作中のお二人に当時のことを振り返っていただきました。
TCP2022にご応募をお考えの方は「応募者目線」「審査員目線」両方を学べること間違いなし!必見です!

自己紹介

藤田 : 東京大学4年生の藤田健司です。現在、大学を1年間休学し『バトリーヌ!(仮)』脚本開発や、映画鑑賞の日々を過ごしています。また、脚本に関しては2013年に大会にて優秀賞をいただいたことがきっかけで、本腰を入れて脚本の勉強を始めました。具体的には、シナリオ・センターに中学3年生から通信講座でも受講しており、TCP受賞までは、たまに賞に応募するという生活を過ごしていました。

瀬戸 : エイベックス・ピクチャーズ株式会社にて、映画やドラマのプロデューサーをしている瀬戸麻理子です。最近では、劇場版『きのう何食べた?』のプロデューサーをいたしました。元々は松竹に所属しておりまして、城戸賞の審査員も担当したことがあります。
※劇場版『きのう何食べた?』監督は、初代TCPグランプリ受賞者の中江和仁氏(受賞作品『嘘を愛する女』)

TCPについて知ったきっかけ

藤田 : シナリオコンクール一覧を気にして見ている中、最初は多数の賞の一つとしてしかTCPを認識していませんでした。
ただ詳しく調べていくうちに、製作費支援の手厚さや審査員の方々と密にコミュニケーションができる点、何より実際に映像化を確約いただける点に魅力を感じました。
単純に審査をしてくださるのみならず、最後まで面倒を見てくれるコンペティションは少ないので、他ではなくTCPに応募するモチベーションは高かったです。

脚本部門にした理由

藤田 : 元々文章を書くのが好きで、自分でストーリーを作って人形遊びをやっていたこともあります。そんな中、幸運にも大会で優秀賞をいただくことができて、本格的に脚本に興味を持ち始めました。脚本部門への応募は、単純に脚本家として映画製作に携わってみたかったからなのですが、実は企画部門にも別作品を2作ほど出していたんですよ…(笑)

一次審査(企画書)に関して企画書で意識したポイント

※TCP2020年度から、2022年度の応募用企画書フォーマットには変更があります

藤田 : (TCP2020年度のご自身が提出された企画書を見ながら)色々と当時のことを思いだしてきました…(笑)
企画書作成時は、とにかく審査員を含めた多くの人に「見られる」ことを意識して書きました。

文章をとにかく読みやすく精査すること
ログライン、企画のテーマ、意図、訴求ポイントに重点を置くこと
大事なところは赤字等で差別化すること

審査員の方々は、例年600件以上の企画書に目を通されているので、その中でも埋もれないように一定の客観性を意識して「分かりやすく書くこと」を心がけました。この観点は、大学の授業での経験が活かされたかなと思っています。大学の授業では、プレゼンを行うこともあるのですが、折角の良い内容も伝わらなければ勿体ないということは、日頃から思っています。

アイデアを具体に落とし込むプロセス

藤田 : 企画のテーマ、題材テーマ、訴求ポイントを最初に考えました。その後、それを補足する形で周りを固めていった感覚です。元々、僕は幼い頃にダンスを習っていて、辞めた後もダンスを見るのが好きでした。ある日YouTubeをなんとなく見ていて、アニソンダンスを発見したことが『バトリーヌ!(仮)』の始まりです。自分の好きな事や興味のあることを起点に構想を膨らませていきました。

瀬戸 : 藤田さんの企画書は、彼自身が意識していた通り見やすく、頭に入りやすかったです。企画書の最後にYouTubeのリンクが貼ってあったのですが、とにかく「見てみよう」と思って検索しました。良い企画書は、他にも幾つかあったのですが「次のアクションを起こさせる企画書」は中々なく、藤田さんの思いや意図が伝わりました。

また、TCPは文字・枚数制限含めてフォーマットがある程度決まっています。その際に大切なことは「いかに分かり易いか」「審査員に思いが伝わるか」ということ。例えば、あらすじの部分が、途中までしか書かれていない企画書は勿体ないなと感じます。特にオリジナル作品の場合、その物語の過程や結末は応募者自身の頭の中にしかありません。「○○とはいかに…」という締め方は、その物語の導入としては良いかもしれませんが、企画書のみで応募された場合、評価のしようがないのです。結末の分からない物語を審査で通すのは、厳しい面がありますよね。企画書が「読まれるもの」であり、コンペである以上「審査する側がいる」という目線は忘れないでいただきたいポイントです。

二次審査に関して(面接)

藤田 : 聞かれそうな質問を、事前に頭の中で考えて反復練習しましたが、特に「これを準備しました」ということはないですね。緊張はしていましたが、それを悟られないようにしようと思っていました。幸いにも、TCP事務局の迎えに来てくださった方がほぐしてくれて最善を尽くすことができたと思います。

瀬戸 : 10名ほどの面接官 vs 応募者という形になってしまうので、二次審査は全体としてみんな緊張されているんですよね。ただ、こちら側は面接というよりディスカッションをしたいというスタンスなんです。事前準備されたプレゼンはもちろんですが、どちらかというと私はコミュニケーション能力を見ていますね。聞かれたことに対して、どのように答えるかという受け答えの明瞭さは、今後監督や脚本家など、一緒に仕事をしていく上で非常に大切になると思います。藤田さんは、このまま(インタビュー時のまま)だったんです…(笑)

また「企画の種」は良いのに、中々掘り下げられていない人も二次審査で直接お話を聞くと浮き彫りになることがあります。人によっては、説明のための説明が多いんですね。私としては、その企画に芯があるかどうかを見たいのですが、中々その部分が見えない方がいました。「こうしたい」のその先に、しっかりとしたビジョンがあるかどうか、その場しのぎの考えで答えていないかをみるようにしています。

最終審査に関して

藤田 : 多くの人の前でのプレゼンなので、順序立てて「わかりやすく話すこと」は意識しました。あと、これは持論なのですが、僕自身、長時間のプレゼンを受け手側がずっと集中して聞いているとは思っていないんです。そこを意識して、資料だけを見ても「言いたいことが伝わる」ように資料作成は徹底しました。

他の登壇者と比較して、映像を見たら「あ、思った以上に目が泳いでいるな」と恥ずかしくなりました。他の方は、プロデューサーの方を見ていたのですが、僕はずっとモニターを見てしまっていたのは反省点ですね。

TCP2020最終審査でのプレゼンの様子

瀬戸 : 緊張はもちろんされていたと思いますが、すごく堂々として立派だと思いました。二次審査で各通過者に審査員がコメントをするのですが、私はそこから期間を経て、企画がどう変化したのか、通過者がどう感じ、以降行動したのか「伸びしろ」をみるようにしています。

藤田さんのプレゼンにコメントする瀬戸さん

また、藤田さんのプレゼンに関して言えば、他の人のそれに比べて、現場のプロの企画書・伝え方に似ていたんですよね。例えば「こういうポイントで映画にしたいです」というものが明瞭で、実際に伝わってきました。

現在に関して

藤田 : 脚本の技術に関して書き直すたびに学びになっています。また、瀬戸さんがオススメしてくださる名作(課題映画)を観て「こういうところは真似しよう」等、日々試行錯誤を重ねながら執筆しています。

また、現場では「映画」が共通言語になっていると感じました。「○○という作品の○○という部分のようにしたいよね」「○○という作品の○○シーンが良かった」というように、イメージを伝える手段として「映画」が引用されるのですが、僕はそれらを観ていないことが多々あります。そういう場合、現場が盛り下がってしまうことがあって申し訳ない気持ちになります…(笑)。今後、頑張ってみようと思っています。

瀬戸 : 若い人とお仕事をすると、感覚の違いもあって、やはり勉強になることが多いです。例えば、青春に近い人に青春を語ってもらうのがベストじゃないですか。商業映画で初めて映画製作に携わる方とお仕事をするのは、脚本家では藤田さんが初めてなのですが、事前に「いっぱい(作品に関して)言うと思うけれど、その方が絶対良くなるから、あまり気にしないでね」と伝えました。先ほど、実際に学びになっていると言ってくれて安心しましたね(笑)

未来に関して
TCPに期待すること

藤田 : TCP最大の魅力は、最後まで映像化をバックアップしてくれることだと思います。監督や脚本家志望の方々の多くは、オリジナル映画を実現化したいと思っておられる方が多いと思います。この取り組みは、ぜひ続いて欲しいなと感じています。

また、プロ・アマ問わずと謳われていることは本当で、僕みたいに商業映画やったことがない人にも門戸を開いているコンペは中々ありません。損することはないので、とりあえず出してみることをオススメします!

瀬戸 : 「流行っているから」とかだけでなく、内容に興味を持ち「これ面白そう」と純粋に思って、映画を見に行く人が増えればと、最近の映画市場を見ていて感じます。そんな中、オリジナル作品を世に出すことが出来るTCPの取り組みはありがたく、メジャーな取り組みになって欲しいと個人的に感じています。

瀬戸さんから若手クリエイターへの一言

映像業界は、常に「何者」でもない人を求めています。枠はいっぱいあります。自分なんかと臆さず、謙遜せずに、じゃんじゃん門戸を叩いてみてください!

TCP2020 グランプリ受賞作品

題名『バトリーヌ!(仮)』
あらすじ:人前が苦手な優しいアニオタ男子・濱野(18)と、毒舌の生粋女子ダンサー・ひな(18)。アニソンダンスを完コピする濱野を、ひなが盗撮したことから全ては始まった――。
あれよあれよと2人はアニソンダンスバトルにチームで出場することに。練習でも本番でもぶつかり合う2人は、人々の「好き」が詰まった熱い舞台で勝ち上がることができるのか?

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