1000名を超える、多くの『スター・ウォーズ』ファン達の署名により、日本公開が実現した『ファンボーイズ』。
実は、この映画は日本だけではなく、
製作段階から全米公開に至るまでにもファンに支えられた作品なのである。
『ファンボーイズ』は当初、2007年8月17日に全米公開されることになっていた。
しかし、制作資金が得られたため追加撮影を行うことに。
出演者が集まれるのは2007年9月のみだったため、公開日は2008年1月に変更された。
ところが、結局追加撮影が2007年11~12月までに行うことが出来なかったので、公開は再び延期になった。
そんな中、
「がんにかかった余命わずかな友人のために、『エピソード1』を見せようとする」
というあらすじをなくして、代わりにギャグが大量投入され映画が編集されているとメディアが報じた。
『ファンボーイズ』は、『スター・ウォーズ』ファン仲間の1人・ライナス(クリス・マークエット)が
末期がんという設定で、彼に『エピソード1』を見せてあげようとする仲間たちの友情が主軸にあるヒューマン・コメディ。
しかし、主にティーン層向けに売るためにがんとの闘病の話は不要と配給サイドは判断したのだ。
こうした作品のテーマの改変に対し、『スター・ウォーズ』ファンは団結。
オリジナルバージョンの劇場公開を要望する活動が開始された。
『スター・ウォーズ』のオールドファンの中には、
「『エピソード1』を余命わずかな友達に見せてあげるために繰り広げる旅」というストーリーに心を惹かれている人も多いだろう。
なぜなら『スター・ウォーズ』仲間の間でも、30年以上もの長いシリーズの歴史の中で『エピソード1』を見ることなく、
また『スター・ウォーズ サーガ』の完結を待たずにこの世を去ったファンは少なくないはずで、
だからこそこの『ファンボーイズ』に感情移入している側面もあるのだ。
彼らの願いは切実だった。
このようなファン達の活動を経て、余命わずかな仲間という設定が含まれたラフカット版は
2007年7月14日に「スター・ウォーズ セレブレーションヨーロッパ」にて試写が行われ、初めて一般公開された。
カイル・ニューマン監督とのQ&Aとともに行われたこの試写は、
大観衆のスタンディングオベーションで迎えられた。
ストーリーの改変はファン達の念願が叶って白紙に戻り、
カイル・ニューマン監督率いるオリジナル版を作った制作チームは
与えられた時間の中で出来る限りのことを行い、映画が元通りになるように作業を行った。
制作チームは作品を元に戻すための再編集に36時間のみを与えられ、これをこなしたという。
完成版は2008年7月24日にサンディエゴ・コミコンにて試写が行われた。
そして2009年2月6日の全米公開がようやく決定となった。
全米8大都市40スクリーンでスタートした上映は、
次々に劇場数を増やし2月20日から3月20日までの間に40都市以上で拡大公開された。
世界では、4月3日のカナダでの公開を皮切りに、11カ国以上で上映された。
無事公開された後の2009年5月には、
インターネット映画サイトIMDbでの『ファンボーイズ』のユーザーレイティングが平均で10点満点中7.1点と高評価を獲得した。
実は、これは本家『エピソード1』の10点中6.4点よりも、
『エピソード2 クローンの攻撃』(2002年)の10点中6.8点よりも、
劇場版『クローン・ウォーズ』(2008年)の10点中5.4点よりも高い。
さらには『スター・ウォーズ』パロディ映画の傑作『スペースボール』(1987年)の10点中6.9点よりも高いのである。
(いずれも2009年5月の時点の点数)
このように、『ファンボーイズ』は『スター・ウォーズ』ファンの団結によって
あらゆる困難をファンの力で乗り越えて公開された。
その名の通り、ファンによるファンのための映画なのである。
奇しくも、日本でも同様にファンが声を上げなければ、この映画が見られない状況にあった。
全米公開の1カ月後の2009年3月、
「『ファンボーイズ』日本公開を目指す会」
のホームページが開設され、日本での上映を求めるファンの署名活動が始まった。
ファンサイトでの告知から始まり、
署名を呼び掛けるポストカードを有志で作って映画館やショップなどに配布をお願いする地道な活動も行われた。
そして6月頃には、メディアに取り上げられるまでになった。
この署名活動を知ったカルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)のレーベル、カルチュア・パブリッシャーズが権利を獲得し
2010年元日にDVDリリース決定の発表。
ついに2月、劇場公開が決定し日本のファンの願いが叶ったのである。
『エピソード1』を見たいという一心で、
厳重な警備のスカイウォーカーランチに潜入する無謀な旅に出た『ファンボーイズ』の主人公たち。
彼らと同じように、『スター・ウォーズ』ファンたちも「どうしても見たい映画」のため、
映画さながらに困難がありつつも楽しい旅に出た。
そして『ファンボーイズ』と同様、ファンが映画館で熱狂する素敵なエンディングが待っていた。
(text by 『ファンボーイズ』日本公開を目指す会 藤井隆史)